裸子植物花粉粒における前葉体細胞のプログラム細胞死 : II.原形質連絡の不形成と細胞壁肥厚の関与
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概要
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裸子植物の花粉を構成する細胞の1つである前葉体細胞は常に不等分裂による小型細胞として形成される.クロマツ花粉における2個の前葉体細胞はともに細胞死を遂げる.形成直後の第1前葉体細胞(p_1)と第2前葉体細胞(p_2)には凝縮したクロマチンをもつ核と少量の細胞小器官が含まれるが,その後,急激なより強いクロマチンの凝縮と細胞質の縮小が起き,細胞は一様に高い電子密度を示しながら退化・縮小し,TUNEL法に対し陽性を示した.この間,液胞の発達は観察されなかった.クロマツのp_1およびp_2とそれらの隣接細胞との間の細胞壁は厚くカロースを含み,原形質連絡は形成されない.一方,細胞死しない生殖細胞と管細胞との間の細胞壁は薄く,カロースを含まず,原形質連絡が形成される.発達中の花粉を遠心処理し,分裂の極性や不等性を乱すと,細胞死しない前葉体細胞が誘導され,それらの中には隣接細胞との間に原形質連絡を形成するものが出現した.イチョウの2個の前葉体細胞のうち,p_1はクロマツの前葉体細胞と同様の細胞死を遂げ,p_2は生き続ける.p_1と胚的細胞の間の細胞壁は肥厚し,原形質連絡は形成されなかった.一方,p_2と造精器細胞および生殖細胞と管細胞の間の細胞壁は薄く,それらの間に原形質連絡が複数形成された.イチョウではこれらすべての細胞壁にカロースが検出された.以上より,本2種における前葉体細胞の死はDNAの断片化をともなうネクローシス型細胞死であり,その細胞死には前葉体細胞と隣接細胞との間における細胞壁の肥厚と原形質連絡の不形成によって生じる物質移動の阻害が深く関与することが示唆された.
- 2013-06-30
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