フラグモプラストの特異な発達様式がもたらすマオウ属植物花粉における不均等分裂
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概要
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マオウ属植物の花粉は減数分裂ののち,小胞子,胚的細胞,造精器細胞,生殖細胞,中心細胞による5回の細胞分裂を経て完成する.分裂はすべて不均等分裂であり,前4個の細胞では,楕円形をなす細胞の長軸の一端へ紡錘体が偏在することがその一因となる,さらに,分裂の不均等性をより増幅するフラグモプラスト(隔膜形成体)の特異な発達様式が明らかとなり,その特徴は,造精器細胞分裂において顕著であった.造精器細胞分裂終期の早期,フラグモプラストは,微小管が集合した2群のリング状構造として2娘核間に出現する.2リングは同じ径をもち,各微小管は分裂軸に平行に配向し,遠心的に成長するという通常の様式を示す.しかし,終期の中頃,リングを構成する各微小管は分裂軸に対し垂直へと配向を変え,それに伴い2群のリングの径に差が生じ,互いに同心円状へと配列を変える.さらに発達方向を分裂軸に対して平行に,2娘核のうちの生殖細胞核を包み囲む方向へと転じる.終期の晩期には,微小管のリングは再び早期のそれと同様の配列にもどりつつその径を減じ,細胞長軸の一端の細胞膜に達し,不均等分裂を完了する.また,中心細胞の分裂では,フラグモプラストは2娘核間で通常の発達を開始するが,やがて発達を停止し,細胞板を形成することなく退化・消失する.その結果,2娘核を含む1個の精細胞が形成されるが,2娘核には大きさの差が生じる.
- 2011-06-30
著者
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平塚 理恵
東京慈恵会医科大学解剖学講座第1生物学研究室
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寺坂 治
慈恵医大・解剖第1・生物研
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寺坂 治
東京慈恵会医科大学自然科学教室生物学研究室
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平塚 理恵
東京慈恵会医科大学自然科学教室生物学研究室
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