カツラ梢端枯れ木の葉の生理的・形態的特性
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
街路樹の梢端枯れ木における生理的・形態的特性を明らかにするため,東京大学柏キャンパス構内のカツラを対象に,健全木と梢端枯れ木における樹冠上部と下部の葉の水分生理特性,光合成・暗呼吸速度,および当年枝シュートの形態を調べた.その結果,梢端枯れ木は調査期間を通じて夜明け前水ポテンシャルが健全木より0.1MPa程度低く,P-V曲線法で求めた原形質分離を起こす水ポテンシャルも低かった.葉の光合成速度は,展葉後から7月上旬まで健全木と梢端枯れ木の間に差が無かったが,7月下旬以降に梢端枯れ木で低下し始め,特に樹冠上部の葉で低下が著しかった.以上から,梢端枯れ木は健全木に比べ個体全体が慢性的な水ストレス下にあり,樹冠上部では夏季に強光・乾燥ストレスも加わって葉の生理機能が低下することが梢端枯れの要因と考えられた.さらに,梢端枯れ木では健全木に比べて当年枝シュートの葉面積が小さく,樹冠下部のシュート伸長量が著しく大きい特徴を示した.このことから,シュート形態特性は樹冠内の水ストレスを反映して変化し,街路樹の生育阻害要因や樹木医学的診断の指標の一つとなる可能性が考えられた.
- 樹木医学会の論文
- 2011-10-31
著者
-
田中 憲蔵
森林総合研究所
-
福田 健二
東京大学大学院新領域創成科学研究科
-
野口 雄二郎
東京大学大学院新領域創成科学研究科
-
田中(小田) あゆみ
東京大学大学院新領域創成科学研究科
-
福田 健二
東京大学大学院農学生命科学研究科
-
田中 小田
東京大学大学院新領域創成科学研究科
-
梅林 利弘
独立行政法人森林総合研究所
-
赤見 亜衣
東京大学大学院新領域創成科学研究科
-
松村 愛美
東京大学大学院新領域創成科学研究科
-
梅林 利弘
東京大学大学院新領域創成科学研究科
関連論文
- マレーシアサラワク州 ニア森林保護区(森めぐり1)
- ケヤキ衰退木の光合成・蒸散速度
- 梢端枯れ木および腐朽被害木の葉の光合成速度,蒸散速度,および葉の形態 : 東京大学柏キャンパス内のカツラ街路樹の事例
- 梢端枯れをおこしたカツラ植栽木の葉の水ポテンシャル及び土壌特性
- 葉緑素計を用いて判定したケヤキの活力度と葉の光合成・蒸散速度の関係
- シラカシとヒサカキにおける葉内生菌の内部分布の比較
- いずみ野駅前通桜並木における根株腐朽診断法の検討
- いずみ野駅前通桜並木におけるベッコウタケの分布
- 横浜市小黒公園サクラ集団枯損の現況調査
- コブサルノコシカケモドキが発生した「横浜市指定名木古木サルスベリ」の診断と治療経過(臨症事例)
- 中国内蒙古自治区に生育する臭柏(Sabina vulgaris Ant.)の地下水面からの距離と種子充実率
- カツラ衰退木の生理特性
- 町田市・中野区の街路樹における腐朽菌子実体が発生したサクラ類樹体内の腐朽分布
- 学会報告 樹木医学会第13回大会報告
- 中国内蒙古自治区に生育する臭柏(Sabina vulgaris Ant.)の個体サイズにともなう光合成能力と葉の特性の変化
- 中国内蒙古自治区に生育する臭柏(Sabina vulgaris Ant.)の地下水面からの距離と光合成・蒸散速度の関係
- 標高変化に伴うブナ葉内生菌相の変化に関する研究
- サクラ植栽樹における根株腐朽菌子実体発生の移り変わり
- カツラ梢端枯れ木のシュートの形態特性
- 千葉県北西部の都市近郊林における樹木葉内生菌群集
- 「樹木病害デジタル図鑑」, (独)森林総合研究所森林微生物研究領域編, CD版, 発行 平成21年3月, 全国森林病虫獣害防除協会, 定価3,000円(税込,送料別)
- マツ材線虫病の被害による外生菌根菌群集の多様性の低下
- コンパクトMRIからみたマツ材線虫病における通水阻害と線虫分布との関係
- 「樹木医が教える緑化樹木事典」, 矢口行雄監修, 誠文堂新光社, 336pp., 2009年6月発行, ISBN-10:4416409060, ISBN-13:978-4416409060
- マツ材線虫病における通水阻害進展様式の解明に向けたコンパクトMRI多点撮像法の開発
- 難波成任監修, 「植物医科学(上)」, 養賢堂, 2008年7月, 336pp., 2,940円
- 「樹木学」, 濱谷稔夫著, 地球社, 2008年, 425pp., 4,000円, ISBN978-4-8049-5105-8
- 山地の森林と都市近郊林における樹木内生菌相の比較
- 樹木医学会第11回大会シンポジウム「これからの樹木医学」
- 樹木医学会第10回大会シンポジウム「これからの樹木医」
- マツノザイセンチュウ接種クロマツ苗のMRIによる非破壊観察(一般講演(口頭発表),第8回大会講演要旨)
- 第5回現地検討会(赤松街道)に参加して
- 森林微生物生態学, 二井一禎・肘井直樹編著, A5判, 322ページ, 朝倉書店, 2000年11月, 本体6,400円
- 「マツ林の保全とマツ枯れに関する国際シンポジウム」報告
- 異なる季節に与えた物理的傷害に対する4樹種の反応
- 亜高山帯モミ属林における林分の発達と実生の定着の関係
- 落葉期の光をうまく利用するモミの稚樹(北から南から,Information)
- 全天条件下における植栽直後のDyera costulataのガス交換および光阻害におよぼす人工遮光物の初期効果
- 裸地植栽における脆弱な熱帯樹種のための人工遮光物の試作
- 落葉期の光をうまく利用するモミの稚樹
- 亜高山帯モミ属林における林分の発達と実生の定着の関係
- 国指定名勝小金井桜の腐朽病害とその発生要因
- ケヤキヒトスジワタムシ (Paracolopha morrisoni) による虫えいがケヤキ街路樹の葉の光合成に与える影響
- 異なる季節に与えた物理的傷害に対する4樹種の反応
- カツラ梢端枯れ木の葉の生理的・形態的特性
- IKONOSデータを利用したマツ枯れ被害林分の抽出
- 森林遺伝育種学, 井出雄二・白石進編, 文永堂出版, 2012年10月, 296ページ, 5,040円(税込), ISBN978-4-8300-4124-2C3061(ブックス,Information)
- 「微生物生態学への招待〜森をめぐるミクロな世界〜」, 二井一禎, 竹内祐子, 山崎理正編, 京都大学学術出版会, 2012年4月1日発行, ISBN:978-7-87698-597-5C3045
- 2次元イメージングクロロフィル蛍光測定器による障害部位可視化の試み
- 樹木医学会第16回大会報告
- 落葉性,常緑性広葉樹における内生菌群集の季節変化と葉齢効果
- マツ材線虫病被害程度による樹皮下穿孔性昆虫の生息状況の比較
- 斑点症状を呈するシラカシ葉上の菌と優占する内生菌Tubakia sp.の病原性
- I-036 Personalized TV-program Recommendation using Users' Viewing Histories and Time-Frames
- カツラ梢端枯れ木の葉の生理的・形態的特性
- ケヤキヒトスジワタムシ(Paracolopha morrisoni)による虫えいがケヤキ街路樹の葉の光合成に与える影響
- カツラ梢端枯れ木における葉の生理生態特性
- 「さくら百科」, 永田洋・浅田信行・石川晶生・中村輝子編, 丸善, 2010年1月発行, フルカラーA5判, 上製函入380ページ, 本体価格7,000円, ISBN978-4-621-08193-8 C1501
- カツラ梢端枯れ木のシュートの形態特性
- コンパクトMRIからみたマツ材線虫病における通水阻害と線虫分布との関係
- 異なる季節に与えた物理的傷害に対する4樹種の反応
- 「カラー版 日本有用樹木誌」, 伊東隆夫・佐野雄三・安倍久・内海泰弘・山口和穂著, 海青社, 2011年7月発行, ISBN:978-4 c 86099-248-4, 3,500円 / 「知っておきたい100の木-日本の暮らしを支える樹木たち」, 田中潔著, 主婦の友社, 2011年7月発行, ISBN:978-4-07-278497-6, 1,680円 / 「絵で分かる樹木の知識」, 堀大才著, 講談社, 2012年6月発行, ISBN:978-4-06-154763-6, 2,310円
- 千葉県北西部の都市近郊林における樹木葉内生菌群集
- サクラ植栽樹における根株腐朽菌子実体発生の移り変わり
- 千葉県柏市の森林における放射能汚染の実態
- 樹木医学会第16回大会報告
- 2次元イメージングクロロフィル蛍光測定器による障害部位可視化の試み
- カツラ梢端枯れ木における葉の生理生態特性