学校革新を規定する組織特性要因の分析 : 学校革新と組織健康(organizational health)との関係の検討(III 研究報告)
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概要
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本研究の主たる目的は、林数量化理論第III類の適用によって教員による組織健康の受け取り方の構造を明らかにし、その上で学校革新と組織健康との関係を明らかにすることであった。その主な結果は、次の通りである。1 林数量化理論第III類の適用の結果、組織健康の尺度を構成するOHDQカテゴリーの分布は、内容段階順の配列をとる単純構造を示していた。2 組織健康度の低い評価を規定する要因(質問項目)は、凝集性、モラール、問題解決の適切性、最適な権力の平等化の次元にあり、逆に健康度の高い評価を規定する要因は、コミュニケーションの適切性、資源活用、革新の次元にあり、そしてその中間的な評価を規定する要因は、目標の焦点化、自律性、適応性などの次元にあった。3 サンプル・スコアの分布をもとに、教員の組織健康度評価の類型化を行い、革新的学校群と非革新的学校群における組織健康度評価類型の出現頻度の検討を行った。その結果、革新的学校群における教員の方が、非革新的学校群における教員よりも組織健康度の評価が高いことがわかった。4 また組織健康度の評価は、職位、年齢、全教職年数などの個人属性によって影響を受けていることがわかった。すなわち、(1)校長、教頭、教務主任などの管理的職位の教員は、一般の教員よりも、組織健康度を高く評価する傾向がある、(2)年齢が高くなるに従って、教員は組織健康度を高く評価する傾向がある、(3)全教職年数が長くなるに従って、教員は組織健康度を高く評価する傾向にある。性、現在学校での勤務年数については、本研究では有意な関係は認められなかった。5 補足研究として行った学校革新とその他の要因との関係の検討については、次のような結果を得た。(1)一般に、規模の大きい学校の方が、革新性が高い。(2)視聴覚教室をもつ学校の方が、もたない学校よりも革新性が高い。なお、女子教員構成比率、一学級当たり教育機器台数については、学校革新との間に有意な関係は認められなかった。以上の結果から、学校革新と組織健康との間には有意な関係のあることが検証された。このことは、マイルズの主張するごとく、学校革新の成否を決める一つの重要な鍵が、学校組織の内部特性-この場合、組織健康であるが-にあることを示唆するものとして注目される。最後に、本研究の限界を含めて今後の課題について簡単に触れておきたい。第一に、本研究では、教育機器の利用-非利用に特定の教育機器の影響が強く現れないよう配慮したこと、総合利用度と革新性の高いと思われるのVTR利用度との相関が割に高かったこと、などの理由から、革新性の尺度を一一種の教育機器総合利用度に求めたが、今後は、多変量解析を施して、教育機器の利用の構造を明らかにし、革新性の尺度を精緻化する必要がある。第二に、平田(一九七六)、河野(一九八二)の研究では、個人特性は、学校革新を規定する強い要因にはならないという示唆を行っているが、今後は、個人特性要因を含めて、リーダーシップ要因、組織構造特性要因、環境要因等の諸要因が、どの程度学校革新を規定しているかを総合的に分析する必要がある。
- 日本教育行政学会の論文
- 1982-10-01
著者
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