時間の夢,夢の時間 : プルーストにおけるユベール・ロベールの庭
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概要
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プルーストの小説『失われた時を求めて』において,「廃墟の画家」と呼ばれたユベール・ロベールは考えられている以上の役割を担っている。『ソドムとゴモラ』におけるゲルマント大公夫人邸の庭園は,「ユベール・ロベールの噴水」のみならず,庭園自体が画家の作品から着想されていることがわかる。また,この場面の草稿にはプルーストによるユベール・ロベール論とも呼ぶべきテキストが含まれている。プルーストにとってユベール・ロベールはまず第一に記憶の画家であるが,それ以上に重要なのは「逸話の語り部」であることであり,プルーストと画家は「崩壊の美」への感受性を共有している。そして,画家の作品は永遠にそこにあるかのような廃墟に「今」という瞬間を対比することで「永遠」と「儚さ」のはざま,という夢幻的な空間を生み出す。また,廃墟を夢想することによって未来の崩壊を先取りすることも,プルーストとユベール・ロベールに共通しているといえるだろう。
- 2013-01-00
著者
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