プルーストにおける室内装飾 : オデットの「折衷主義」とゲルマント公爵夫人の「帝政様式」
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概要
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オデットの室内装飾の趣味は,"スワンの恋"においてはジャポニスムと中国趣味の入り交じった極東趣味であるが, 花咲く乙女たちのかげに』では, そこに十八世紀風な趣味が混じり始める。これらのエピソードは,オデットの趣味の不確かさと浮薄さを表すいっぽうで,第二帝政期の「折衷主義」による室内装飾を思わせる。ゲルマント公爵夫人の場合,"スワンの恋"では嫌っていた「帝政様式」を「ゲルマントのほう』では賞賛し,『見いだされた時』においては, それを再び嫌う。また, ディレクトワール期と第二帝政期に流行した「ポンペイ風」の装飾が,『失われた時を求めて』では, 繰り返し流行するものとして描写される。つまり,「帝政様式」と「ディレクトワール様式」は第一巻と最終巻を『ゲルマントのほう』を仲介に連関づける。そして, これらのモチーフが間欠的に回帰することによって, 小説の『時の次元』が支えられるばかりか, ディレクトワール期からプルーストの時代をまたぐ, 一世紀に及ぶ規模を小説に与える。オデットの『第二帝政期風』な趣味もまた, 物語に先立つ時間を小説に与える。
著者
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