『何も忘れられない,何も破壊されない』 : プルーストにおけるポンペイのモチーフについての試論
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概要
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『失われた時を求めて』におけるポンペイのモチーフにはいくつかの役割がある。まず,ポンペイのモチーフが室内装飾の分野を中心に流行した,ディレクトワール期と第二帝政期を想起させることである。とりわけ,第一次世界大戦中のパリをディレクトワール期のパリと比較することで,その浮薄な風俗を浮かびあがらせる。次に,同性愛を暗示し,ドイツ軍の爆撃を受けるパリを天の火に焼かれたソドムとゴモラに結びつける。また,第一篇と最終篇にはポンペイを題材にした絵画についての言及があり,それが小説の始まりと終わりを繋ぎ,小説に時間的連続性をあたえる。こうした役割をポンペイのモチーフに負わせるにあたって,プルーストはポンペイを題材にした書物や絵画の記憶を小説に反映させる。いっぽうで,ポンペイのモチーフは考古学のテーマを小説に導入する。こうして密かに再生のテーマに結びつく。
- 2012-01-31
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