公益法人制度改革が公立博物館にもたらす影響
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概要
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本稿では、2008年12月1日から始まった公益法人制度改革の概要を紹介した。公益法人の認定基準は根本から変革され、従来の民法第34条法人は、公益社団法人・公益財団法人になるか、一般社団法人・一般財団法人になるかを5年間の移行措置期間中に決定し、認定または認可を受けるために複雑な申請を行わなければならない。公益法人制度改革関連三法は、従来の公益法人に資産の国民一般への還元を求めるものとも言えよう。 横浜市文化芸術振興財団の場合、経理的基礎が「公益認定」に不可欠であるにもかかわらず、その財政的健全さは、指定管理料の抑制によって脅かされている。埋蔵文化財法人の場合は、発掘事業の「公益認定」の結果が、博物館の指定管理に応募するか否かを左右するであろう。 今回の公益法人制度改革以前に、公立博物館の指定管理者となっている自治体出資法人は、低額の指定管理料、発掘調査事業の減少、市場化テスト等の多くの困難に直面している。地方自治体が今回の改革を機に、出資法人の統廃合を決定する可能性も高い。大阪市の博物館群の場合、市財政再建のための出資法人の統合が、公益法人制度改革への対応よりも先行して検討されており、公益法人制度改革への対応は手つかずの状態にある。 指定管理者となりうる民間団体が未成熟な分野において、博物館の指定管理者である出資法人が公益法人制度改革を乗り切ることができるよう、自治体には迅速かつ適切な方針決定と出資法人との協議、経理等に関する専門的技術的支援を行うことが強く求められる。
- 2010-03-01
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