日本社会の変容とキリスト教用語
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概要
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本稿の目的は,日本におけるキリスト教用語の歴史を社会との関連で記述することである.1549(天文18)年,ザビエルXavierが来日し,日本キリスト教史は幕を開ける.当初,キリスト教は広く受け入れられたが,やがて禁教時代を迎え,信者は厳しい迫害を受け,信仰を守り続けたキリシタンは長期間にわたる地下信仰を余儀なくされた.近世末,開国とともに再び宣教師が来日するようになると,キリシタンは歴史的な復活を遂げ,教会に戻ることとなった.このような歴史的経緯を背景に,九州西北端の長崎・天草地方では幾度も布教用語(訳語)が変更され,その結果,特異な言語現象が行われるようになった.また政府のキリスト教禁教政策は,人々の間にキリスト教邪教観を醸成し,この邪教意識を背景に,いくつかのキリスト教用語がネガティブな意味を持つ語,差別語として使用されるようになった.戦後,この邪教観が薄れるにつれ,そのような言語使用は次第に行われなくなっていった.近年,日本人にキリスト教が身近なものとなるにつれ,商業主義によるキリスト教用語の積極的な利用や,芸術作品での利用,文化財としての記録・保存活動がみられるようになった.今後,この傾向はいっそう強まるものと考えられる.
- 2011-03-31
著者
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