植民地期ジャワの村落と地方自治(第77回全国大会共通論題)
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概要
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19世紀初め以来,オランダ植民地支配の浸透の結果,本来多様で,共同性と一定の自立性を備えていたジャワの村落(デサ)は,次第に画一的な行政村へ再編されていった。特に,デサ統合と原住民自治体条令の影響は大きかった。デサ統合は複数のデサを束ねて新たな一体性を持つ行政村を創ろうとするものだったが,旧デサの結合が強く存続し失敗したケースがあった。しかし,同時に統合された新しい単位で一体性・共同性が発展した場合もあり,デサの共同性とは不変ではなく,状況に応じて変化する相対的なものだと考えられる。他方,1906年の原住民自治体条令はデサを近代的自治体に作り替えることを狙ったもので,上級権力によるデサ役人の構成や任免方法への介入,デサ決定に対する拒否権など,デサの自治を制限する方向性を持ち,村落の自立性とは相容れないものだった。しかし,条令の規定がデサ内で必ずしも遵守されていなかったことも事実であり,必要なデサの財政基盤確立も十分には進まなかった。この意味では,オランダは「原住民自治体」の実質化に十分成功したとはいえなかった。
- 2009-07-25
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