ドイツ地方自治史の連続と変化 : 問題提起に代えて(第77回全国大会共通論題)
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概要
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ナチズム期ドイツのゲマインデは,自立を損ない,独立の尊厳を失う絶大な犠牲を伴いはしたものの,行政組織としては厳しい試練に耐え抜いたと見てよい。ここには,ドイツ地方自治史の一定の連続面が認められるのである。しかし,このような連続性も,言うまでもなくメダルの一面にすぎない。これと併せて,ドイツ自治制が被った「深刻な変化」が忘れられてはならない。ドイツ地方自治の現代史が辿った悲運には,重大な断絶の局面が画されたからである。したがって,ドイツ自治制の歴史的基礎とその近代的現在は,架橋不可能な深淵により分け隔てられているわけではないという前望的な認識を真剣に受け止めて,その観点を基本的に踏襲してもよいとすれば,「ドイツ地方自治の連続と変化」の歴史的概要を,ドイツ史の主要なエポックに即して整理する営みは,「地方自治史の国際比較」を議論する共通論題全体の展開にとって,比較の視座と基準を得る上での欠くべからざる準備作業のひとつとしての意味を持つことになろう。課題をこの一点に絞りつつ,研究史を回顧して,問題提起に代えることが,本稿の当面の目的である。
- 社会経済史学会の論文
- 2009-07-25
著者
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