森・里・海とつながる生態系(シンポジウム:「里海」の学術的基礎)

概要

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里海の観点から,森と里と海の生態学的なつながりについて検討した.陸域から沿岸海域へ輸送される主要な物質として,水,栄養塩,土砂,有機物,有毒物質があげられる.人間活動による陸域の利用や河川構造の改変は,物質循環を混乱させ水圏生物の生産力と多様性に重大な影響を及ぼしている.例えば,土砂はダム湖に堆積し砂浜海岸浸食の原因となるが,一方で,ダム湖,荒廃人工林,水田,荒廃農地,開発工事などから大量の微細粒子(浮泥)が流出し,浮泥負荷の増大は沿岸域生態系に大きな悪影響を与えている.難分解性物質を多く含む陸起源有機物は,河川のマクロベントスにより摂食されるが,海のマクロベントスはほとんど利用しない.河川が直線化され陸起源有機物が消費されずに海へ運ばれ海底に堆積すると,微生物分解により沿岸海域の貧酸素化の原因になることが示唆された.また,栄養塩供給のアンバランス化やダイオキシンなどの有毒物質の海産生物に対する影響について論じた.沿岸海域の環境を修復し生態系の機能を再生するためには,陸域との健全な相互関係が必須であり,陸域と切り離して沿岸海域の問題を解決することはできない.
2011-02-28