生活者の体験の役割 : テキスト『低地の利用』の問題点とその克服の可能性
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概要
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言葉の操作,科学者の体験,生活者の体験の3者を有機的に関連付け,内容を設計し配置した教材を構成しないと,すべての子どもが基本的で重要な科学概念・法則を獲得し,かつ自発的な仮説検証的活動を示すことは実現できない。テキスト『低地の利用』は構成に際してこの観点が欠落していたが,第3版にいたって言葉の操作と科学者の体験が十分に吟味,用意された状態にいたったため,この版を用いた授業は生活者の体験の役割を検討できる格好の事例を提供している。その授業はかなりの成果を収めることができたが,同時に生活者の体験が欠落していたことに起因する問題も認められた。この問題に対処した第4版での対策は,3者の充足が必要という観点がなお欠落していたため,生活者の体験の設計,配置としては不十分なものに終わったが,生活者の体験に類似した性格を帯びてもいたその対策の効果を検討したところ,第3版で認められた欠陥は克服され,また自発的な仮説検証的活動の発生も一部に認められた。ただし,こうした成果はすべての子どもにまでは及ばなかったため,内容,配置の変更を行うことで,生活者の体験としての性格づけを十分に行うことが必須と考えられた。
- 日本教授学習心理学会の論文
- 2010-06-18
著者
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