共生微生物等の機能を利用した荒廃土壌の修復を目指して(競争的大型資金プロジェクトによる土壌微生物研究最近の成果,シンポジウム)
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概要
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養分が枯渇し乾燥等のストレスにさらされる荒廃土壌における緑化修復を促進するために,土壌表面の定着する土壌性ラン藻や植物に共生する微生物に着目し,これらの微生物の機能の解明を通して,新たな土壌修復技術に資する。乾燥地等のパイオニア生物であるラン藻について,その耐乾性機構を解明するとともに,土壌被覆効果による土壌修復の可能性を探った。一方,土壌より多数の耐乾性ラン藻を分離し,その大量培養に成功した。そして,培養したラン藻は,土壌被覆に用いることによって,乾燥を防止して土壌水分を保持する作用のあることを実証した。DNAマイクロアレイを用いて,ラン藻が乾燥ストレスに曝された場合に適応過程を網羅的に解析した。イネ科植物体内に生息するエンドフィティック窒素固定菌に着目し,野生イネから窒素固定菌Herbaspirilum sp.を分離し,この菌株が野生イネの茎葉部に定着し,実際にイネ体内で窒素固定することを明らかにした。さらに,植物体内で絶対嫌気性窒素固定菌Clostridiumが好気性(あるいは通性好気性)細菌と共同体(コンソーシアム)を形成していることを発見し,この嫌気性窒素固定コンソーシアム(ANFICO; Anaerobic Nitrogen Fixing Consortium)は,荒廃土壌のパイオニア性植物に普遍的に存在しており,イネ科草本(ススキ)の体内で窒素固定するだけでなく,植物の塩類ストレス耐性向上にも寄与していることが示唆された。植物の根に共生するアーバスキュラー菌根菌の植生回復における役割の解明を進め,フィリピン・ピナツボ火山泥流地帯の植生回復において,アーバスキュラー菌根菌は植生遷移を促進する機能を有していることが明らかになった。根の内部から菌糸を分離する手法を活用することによって,菌から植物へのリン供給をin vitroで再現することに初めて成功し,菌体内のリンのプールとしてポリリン酸が重要性を初めて定量的に明らかにした。菌糸中でのリンの輸送を担う液胞が,他の菌類では例をみないきわめて発達した管状構造であることを発見し,リン輸送に管状構造が必須であることを示した。上記の成果を活用するために,現場で利用できる新たな微生物利用型技術の開発を進め,雲仙普賢岳火砕流跡地において菌根菌含有資材による緑化修復技術の有効性を実証した。植生回復用植物種子とその定着を助けるラン藻菌体を含んだペレット資材を開発した。
- 2004-10-01
著者
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