土壌中のウイルス(土の微生物世界)
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概要
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ウイルスは生きた細胞でのみしか増殖できないので,土壌中では植物の根,土壌微生物,土壌小動物等の中に存在している。tobacco mosaic virus等のTobamovirusは極めて安定なウイルスであるため,根から放出されたウイルスは,土壌中でもしばらくの間生存し,新たな宿主植物が植えられると機械的に根に感染を起こす。軟腐病菌等の土壌中の植物病原細菌にはバクテリオファージが感染しているが,これを細菌病の防除に使用する試みは成功しておらず,現在はファージを利用した細菌の分類,同定,検出,定量等の手段として用いられている。コムギ立枯病菌等の土壌中にある植物病原菌には,時に菌類ウイルスが感染している。菌類ウイルスの宿主である菌に対する影響,自然界での伝搬方法は殆ど明らかにされていない。コムギ立枯病菌のウイルスを例にとると,血清学的性状の異なる4群のウイルスが検出されており,しばしば同一細胞に複数のウイルスが感染することが明らかにされている。土壌伝染性植物ウイルスの媒介者として,土壌棲息菌が数種類認められているが,菌とウイルスの関係には2種類あり,1)休眠胞子中にウイルスが存在しそれより発芽した遊走子でウイルスの伝染が起こる場合,2)休眠胞子中にウイルスはなく,遊走子の表面にウイルスが吸着されてウイルスの伝染が起こる場合とがある。土壌に棲息する植物寄生性線虫の中のニセハリセンチュウ目により媒介されるウイルスとして約30種類が知られている。ウイルスを獲得した線虫は数ヵ月以上体内にウイルスを保持するが体内で増殖はしない。体内の食道等にウイルスが吸着されるが,その表面構造とウイルスの外被蛋白質との間の特異的な親和性等により,媒介の有無が決められる。
- 日本土壌微生物学会の論文
- 1993-10-01
著者
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