土壌糸状菌相における養分競合(土壌病害と土壌微生物)

概要

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土壌病原菌を土壌微生物相を構成する一員と考えた場合,土壌中での腐生的行動は病原菌と同じ活性域を有する菌群あるいは活性域を異にする菌群の中で検討する必要がある。本報告は対象を土壌糸状菌に限定し,養分競合について検討した。土壌中において各糸状菌が確保する生息域は一定時間に吸収する養分と関連があり,また,各糸状菌の活性を維持するために費消する養分は糸状菌により異なる。主要養分のうち,炭素源,窒素源の要求量は各糸状菌によって異なり,一定時間に費消する養分の種類,一定面積への拡がりに要する養分の種類の相違もまたその糸状菌の土壌中での生活を制限する因子になる。養分要求型により,糸状菌を低CN比型,高CN比型および中間型に大別すると,それぞれの菌群により土壌中での行動は異なっている。キュウリつる割病の発生は作付ごとに変動するが,その原因の一つは病原菌と競合する菌群の養分利用性が挙げられる。病原菌と同じ低CN比型菌群との競合では病原菌は腐生的活性を維持するための養分競合を行ない,高CN比型菌相の下では劣勢型菌群に見られる耐久型の競合が認められる。土壌から根面への糸状菌の定着は,土壌と根の浸出物のCN比が異なる場合には土壌中の糸状菌は一時的ではあるが根への定着がおくれる。根の浸出物と同じCN比条件を前以て土壌に与えれば定着は容易である。これらの結果から,宿主到達前の土壌病原菌の行動は土壌の養分型およびそこに生活する菌群により左右されていると考えられる。
日本土壌微生物学会の論文
1989-11-01

土壌糸状菌相における養分競合(土壌病害と土壌微生物)

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