ルーメン内における微生物の生態
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概要
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この総説では,私の経験と知見に基づいてルーメン内の環境,ルーメン内の微生物の種類,ルーメン内における細菌の存在様式およびルーメン内における細菌の動態を研究するための検索技法の問題について論評した。記述した内容の要点は次のようであった:1.ルーメン内の環境は嫌気的な系,ルーメン容量に規制された胃内物量の一定な系,ルーメン内容物を中性に維持するほど大量で緩衝能の強い唾液の流入する緩衝系および家畜体温に保障された恒温系といった特徴を示すと指摘した。2.ルーメン内には原性動物,細菌,真菌およびウイルスが存在するが,ここでは主に細菌の種類について説明した。細菌をいかなる飼料成分を分解できるかに基づいて群別し,更にはそれぞれの細菌を狭食性および広食性の面からも注釈を加えてみた。3.ルーメン内の細菌はルーメン内で遊離状に生活する遊離状生活菌群,固形性飼料部に局在する固形飼料共存菌群,ルーメン上皮に局在するルーメン上皮共存菌群および原生動物の体表に局在する原生動物共存菌群に大別されること,更には各群の細菌の種類と機能とが異なることを指摘した。4.ルーメン内における細菌の動態を把握するためには培養法によらない検索技法の開発および採用も大切であることを指摘した。
- 日本土壌微生物学会の論文
- 1982-12-15