骨盤底筋協調運動障害を呈する便排出障害型便秘症に対する肛門筋電計と直腸バルーン排出訓練によるバイオフィードバック療法の効果に関する検討
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概要
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【目的】便秘症のうち骨盤底筋協調運動障害に起因する便排出障害に対しては,バイオフィードバック(以下,BF)療法が有効とされ,本学会誌38号1巻において,この病態に対する直腸バルーン排出訓練単独によるBF療法の有用性を報告した.それ以降,肛門筋電計を用いた真の意味でのBF療法を併用することによって更に良好な成績を得たので報告する.【方法】2010年8月〜2011年5月に,骨盤底筋協調運動障害に起因する便排出障害型便秘症に対して直腸バルーン排出訓練に加えて肛門筋電計を用いてBF療法を施行した19例を対象に,その臨床背景と治療効果を検討した.治療効果は,便秘症状をmodified Constipation Scoring System (mCSS : 症状なしO点〜最重症26点)で,生活の質をPatient Assessment of Constipation Quality of Life Questionnaire (PAC-QOL : 最善1点〜最悪5点)で評価するとともに,BF療法における怒責時の肛門筋電計活動度の変化も評価した.また,受けた治療に対する満足度を5段階で評価した.【結果】19例の年齢中央値は73歳(範囲:62〜85歳),男性13例で,BFセッション回数は中央値3回(1〜5)であった.4例は初回のBF療法後に来院しなかったため,BF療法後に治療効果を評価出来たのは15例であった.mCSS中央値(範囲)は,初診時12点(6〜18)からBF療法直前10点(4〜14)と有意に改善し(P=0.0005),BF療法後には5点(3〜12)と更に有意に改善した(P=0.004).PAC-QOLも,初診時3.3点(1.7〜4.6)から2.7点(1.7〜3.8)と有意に改善し(P=0.009),BF療法後には1.5点(1.0〜2.7)と更に有意に改善した(P<0.0001).BF療法における怒責時の肛門筋電計活動度を評価出来た10例では,BF療法初回の中央値9μVが,最終回には4μVと有意に低下した(p =0.0156).BF療法後に評価出来た15例での治療に対する満足度は,「非常に満足」7例,「かなり満足」4例,「満足でも不満でもない」2例,「あまり満足していない」1例,「全く満足していない」O例,無回答1例で,「満足」と回答したのは11例(73%)であった.【結論】骨盤底筋協調運動障害を呈する便排出障害型便秘症に対するBF療法において,直腸バルーン排出訓練に加えて肛門筋電計を使用すると治療成績が向上し,便秘症状も便秘特異的な生活の質も有意に改善した.
- 2012-04-25
著者
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味村 俊樹
高知大学医学部附属病院 骨盤機能センター
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味村 俊樹
高知大学医学部附属病院骨盤機能センター
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福留 惟行
高知大学医学部外科学講座外科i
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福留 惟行
高知大学医学部附属病院外科
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福留 惟行
高知大学医学部外科1
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