内視鏡外科手術における研究と治療の進歩(3)泌尿器科領域 (1)腎臓-腹腔鏡下移植用腎採取術の現況

概要

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腎臓に対する腹腔鏡下手術には、腎悪性腫瘍を対象とした腹腔鏡下根治的腎摘除術や腎部分切除術などに加えて、生体腎移植のドナーを対象とした腹腔鏡下移植用腎採取術もそのひとつとして位置づけられる。しかし腎悪性腫瘍に対する手術と移植用腎採取術とでは根本的な概念が異なり、術式も大きな違いがあるため、本稿においては、腹腔鏡下移植用腎採取術について、自験例をもとにその現況を解説する。わが国における腹腔鏡下移植用腎採取術は、ハンドアシストを用いて経腹膜的に腎臓に到達する術式(HALDN)とハンドアシストを用いず後腹膜的に腎臓に到達する術式(RPDN)が代表的であるが、われわれは前者の術式を2001年2月に国内では最初に導入し、2011年9月末までに850例(左腎採取術817例、右腎採取術33例)に対して実施した。その手術成績は、平均手術時間は144.1+-38.1分で、出血量は39.7+-60.8gであり、開腹に移行した例や、輸血を必要とした例は皆無であった。また、術後合併症は、軽微な合併症を23例(2.7%)に認めたが、重大な合併症を併発することはなかった。移植後の機能発現の遅延に、ドナー手術が関与したと推察される症例を4例経験したが、機能発現後の腎機能に悪影響を与えることはなかった。さらに、右腎採取術、複数腎動脈、上腹部手術既往に加えて、患者背景のうちBMI、男性、腎重量などが手術難易度に影響を与える要因と考えられた。以上より、生体腎移植におけるドナーの手術として、腹腔鏡下移植用腎採取術は妥当な術式であり、なかでもわれわれが行っているHALDNでは、開腹移行例や輸血例が皆無であり、合併症の頻度も低く、移植成績も良好であることに加えて、手術時間も短く、出血量も少ない傾向を示した。
2012-06-25

内視鏡外科手術における研究と治療の進歩(3)泌尿器科領域 (1)腎臓-腹腔鏡下移植用腎採取術の現況

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