「個人データ」の法的保護:情報法の客体論・序説
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は,個人情報保護法が国民の遵法意識を高めた反面,幾つかの不具合も生じさせたとの認識から出発して,その原因を情報財の法的取り扱いの難しさの観点から分析した.その結果,情報の保護方式として従来から認められてきた「秘密型」「知的財産型」に加えて,第3 の類型として「個人情報型」を直ちに定立することは,拙速との判断に至った.そこで,人格権をとりあえず捨象した「個人データ」を対象に,著作権のアナロジーから再出発して,そのあるべき姿を検討した.そして,「占有」から「所有」へと連続的に法的取り扱いを論ずることができる有体物と違って,無体財である情報に対しては,「保有」と「帰属」が異なることを前提に,「ライセンス利用」という行為をどのように規律するか,が重要であるとの暫定的結論を得た.要は,「一物一権」が成り立つ有体物の法体系とは別に,「一物多権」を前提にした無体財の法体系を検討する必要がある,ということである.しかし,これは飽くまでも暫定的な結論に過ぎないので,今後さらなる検証を続け,将来的には「情報法の基礎理論」に繋げていきたい.
- 2009-11-01
著者
関連論文
- 個人データの知的財産的保護の可能性
- 電子政府・認証・個人情報
- 通信の秘密の数奇な運命(制定法)
- 情報化社会の未来は開けるのか?
- 通信ネットワークにおける所有権とコモンズ (電子社会と市場経済(7))
- 個人データの知的財産的保護の可能性 (技術と社会・倫理)
- 個人情報保護の必要性と背景 (特集 個人情報保護法とISMS)
- ユビキタス社会における安全と通信のセキュリティを展望する (特集 安全・安心な社会を支える科学技術)
- 電子署名文書管理システム構築における課題と考察
- 電子署名文書管理システム構築における課題と考察
- 情報と安全の法制度(情報通信基礎サブソサイエティ合同研究会)
- 情報と安全の法制度(情報通信基礎サブソサイエティ合同研究会)
- 情報と安全の法制度(情報通信基礎サブソサイエティ合同研究会)
- 著作権,自己登録制度,研究者コミュニティ
- 「情報セキュリティ法」の体系化の試み
- 通信と放送の融合を拒む著作権法の壁 (腰砕け 竹中放送改革)
- 通信自由化20年, 35年, あるいは55年?
- 講演 p2pコミュニケーションの歴史的意義[含 質疑応答]
- ディジタル時代の著作権
- 通信・放送融合法からインターネット法へ(情報通信と放送のデジタル融合とその課題)
- 情報都市論の現在
- 「電子メディア共通法」 としての 「電子公衆送信法」 (案) (ネット社会と倫理問題)
- 著作権の経済学的分析に関する理論的枠組み
- 「個人データ」の法的保護:情報法の客体論・序説
- 係長セキュリティから社長セキュリティへ: 日本的経営と情報セキュリティ
- 著作権の経済学的分析に関する理論的枠組み
- 「実学」とは何か:創刊の辞に代えて
- 情報法の客体論 : 「情報法の基礎理論」への第一歩
- 「秘密」の法的保護と管理義務:情報セキュリティ法を考える第一歩として
- セキュリティ担当者は原発事故から何を学ぶべきか? - 統制環境とガバナンスの視点から -
- 「特集:東日本大震災とセキュリティ」に寄せて
- 「個人データ保護」の法益と方法の再検討::実体論から関係論へ
- 知財的保護と秘密的保護 : 情報法の一般理論に向けて(知的財産,一般)