皮質下機能温存に留意した弁蓋部グリオーマの手術(手術合併症を防ぐために,II 手術訓練としての外科解剖実習-第23回微小脳神経外科解剖セミナーより-,微小脳神経外科解剖)

概要

論文の詳細を見る
弁蓋部グリオーマはeloquent areaである言語運動領野の近傍に存在するため,その摘出はグリオーマの中でも最も困難なものの一つである.近年,脳機能マッピングや神経ナビゲーションシステムなどの手術支援法の進歩により,術後の神経脱落症状を最小限にとどめ最大限の摘出が可能となりつつあり,弁蓋部グリオーマに対しても積極的摘出が試みられるようになってきた.弁蓋部グリオーマの中,腫瘍の首座が口腔・顔面領域のsomatosensory cortexまたはprimary motor cortexと断定できれば,その運動支配は両側性であるので,肉眼的全摘出を目指すことができる.また,Broca areaの一部に限定した切除であれば,必ずしも永続的失語症を引き起こすわけではない.すなわち,弁蓋部グリオーマの手術では,皮質よりも皮質下機能の温存が重要と言える.白質を走行する皮質脊髄路線維の損傷を回避するポイントは,(1)sylvian fissureを広く開放し,中大脳動脈のM2本幹と島上限を捉える,(2)脳溝を指標として腫瘍辺縁の剥離を全周性に進める,(3)島上限より腫瘍内側面を剥離するのではなく,皮質脊髄路白質線維の走行に沿うように頭側より尾側に向かって腫瘍内側面の剥離を進める方法が安全と考えられた.
2011-10-20