王安憶の「上海」 : 『長恨歌』を中心に(<特集>都市と農村-文学テクストから読み解く)
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概要
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上海を舞台とした王安憶の『長恨歌』(1995)は,中国が高度経済成長するのに伴い都市上海が大きく変貌を遂げる中で書かれた都市小説である。テクストには,都市化現象の進む上海で失われつつある王安憶の「原風景」としての上海が,ひとりの上海女性の生活を通して描かれた。また,1940年代の「老上海」を象徴する存在でもある主人公の死は,90年代に広く流行した「老上海」ブームのあり方に警鐘を鳴らすものであった。『長恨歌』の「上海」は,今日の上海のあり方のみならず,より広く中国の「現代化」を思考する場として書かれたのである。
- 2011-11-25