王安憶と「尋根」
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概要
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王安憶の「小鮑荘」は80年代半ばに提唱された「尋根文学」の代表的作品として知られるが,この作品は彼女の「尋根」創作のあり方の一部分を照らし出すにすぎない。当時「尋根」の議論に感銘を受けた王安憶は議論を吟味することで,自己の生活の場において命のルーツを探求し,人間が生きるということや中国の文化といった問題へと掘り下げてゆこうとする独自の「尋根」観を構築した。その「尋根」観を反映させようとした当時の作品はいずれも習作の域を出なかったが,自己の足元から命のルーツを求めようとする問題意識は,「尋根文学」が過去のものとなった90年代以降も王安憶が豊かな文学世界を構築する糧となり続けたのである。
- 社団法人中国研究所の論文
- 2008-04-25