転換期における王安憶の文学観 : 『心霊世界 王安憶小説講稿』を中心に
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概要
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天安門事件で世界観を打ち崩された王安憶は,文学者としてのアイデンティティの再構築を図るために,1993年,復旦大学で文学講義を行った。講義で王は,従来の啓蒙的知識人としてのアイデンティティと一線を画すために,自分は「仕事」として小説創作の専門的技術を身につけた「小説製作者」にすぎないと語り,「小説製作者」が創造すべき理想的小説世界を「心霊世界」という概念によって説明した。しかしそれは現代において実体を持たない等,多くの問題をはらんだものだった。そこにあったのは,80年代までの啓蒙的知識人としての文学者アイデンティティと,新たな自己認識との間で揺らぐ王安憶の姿であった。
- 2010-02-25