描写の映像化と解釈の検証が物語文の読みに及ぼす効果
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概要
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本研究の目的は,物語教材の学習において,登場者の心情をより適切に解釈させるための教授方略の有効性を検証することであった。その方略とは,(1)描写の映像化方略:状況や行動の描写を具体的な情景としてイメージさせること,(2)解釈の検証方略:心情解釈の根拠となる文章をさがし解釈の妥当性を検討させること,の二つである。併せて,物語文の読解において何を重視するかという「読解観」の変容についても検討した。大学生27名を対象に「ごんぎつね」を教材とした授業を実施し,前後の調査結果を比較したところ,以下の点が確認された。(1)心情に関する根拠の希薄な恣意的解釈は修正され,より適切な解釈が獲得された。また,その解釈は複数の場面で一貫して利用された。(2)物語の主題や出来事の背景のように描写からは間接的な内容を重視する傾向が弱まり,個々の場面の描写を重視する読解観が優勢となった。授業経過などの分析から,解釈の検証方略の有効性が示唆されたが,描写の映像化方略については発問への具体化が不十分で効果を確認するに至らなかった。このことは読解観の変容が十分に大きなものとはならなかった一因と考えられた。
- 日本教授学習心理学会の論文
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