保健福祉サービス指標としての高齢者の生命予後に影響を及ぼす健康習慣
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概要
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本研究は、大都市近郊A農村在住の60歳以上の者952名を対象に、具体的な保健指導を行なう指標を得るため、生命予後に影響を及ぼす健康習慣を明らかにすることを目的とした。1991年に自記式集団面接法を用い、850名(89.3%)から有効回答を得て、属性(性、年齢)、既往歴、健康習慣等を把握した。このうち脳卒中、がん、心疾患の既往歴のある91名と、観察期間6年間の転出者12名を除き、747名(男335名、女412名)を分析対象として、1996年末までの死亡者133名(男71名、女62名)と生存者の比較分析を行った。<喫煙>では、累積死亡率比は女で全死因6.9(p<0.01)、がん4.3(p<0.05)、心疾患20.8(p<0.01)で有意に高かった。<飲酒>では、男でがん1.8、心疾患1.8、女で脳血管疾患6.7(p<0.01)、心疾患4.6が高かった。さらに、<海草摂取>を心がけていない者では、男で脳血管疾患2.3(p<0.01)、心疾患2.1(p<0.05)、<間食・夜食控えめ>を心がけていない者では、男で脳血管疾患2.3(p<0.01)、全死因1.9(p<0.05)と死亡との関連が認められた。また、追跡開始2年までの死亡数(26名)を除いても、ほぼ同様の結果であった。健康習慣と死因との関連は、飲酒では、男女共に認められ、海草摂取、間食・夜食では、男で認められた。喫煙では、女では関連が認められたが、男では認められなかった。その理由として既に死亡していたり、調査以前に喫煙を中止していた可能性もあり、喫煙歴を過去にさかのぼって詳細に確認する必要性が示唆された。これらの生命予後に影響を及ぼす健康習慣リスク要因を、今後の保健福祉サービスの指標として活用し、地域保健福祉の目標である"地域において、より健康な生活を目指す「ポジティブヘルス」を実現すること"が期待される。
- 日本保健福祉学会の論文
- 2000-03-31
著者
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