河川改修をめぐる不合意からの合意形成 : 札幌市西野川環境整備事業にかかわるコミュニケーションから
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概要
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本稿は,札幌市を流れるある小河川における,「住民参加」による河川改修事業について,複数のアクターが繰り広げるコミュニケーションのプロセスに注目しながら,その合意形成のあり方について議論するものである。河川改修事業によって策定された維持管理方針「西野川ワークショップ区間の維持方針」は,コミュニケーションが「合意」に至りまとめられたものというよりもむしろ,「不合意」が包摂されたプロセスのなかでかたちになっていったものであった。本稿は,「西野川ワークショップ区間の維持方針」がどのように成立していったのか検討し,従来の合意形成論において,あらかじめ「合意」が想定されていることによって軽視されがちな「不合意」の部分を含む合意形成のあり方について明らかにする。この河川改修事業においては,4回のワークショップがおこなわれ,その後さらに引き続いて参加者有志による改修計画の検討会「西野川を育てる会」がおこなわれたが,そこでの議論は足掛け3ヵ年にもわたった。その間「育てる会」の位置づけや役割をめぐる参加者とコンサルタント間の認識のズレ,「育てる会」と地域町内会の軋礫など,議論は錯綜していった。しかし西野川をめぐるコミュニケーションにおいては,参加者が「不合意」の認識を共有することで初めて,一定の「合意」を形成することが可能となり,参加や議論はさらに継続的なものとなった。このとき「西野川ワークショップ区間の維持方針」は,「不合意」をつねに課題として抱き続けているが,そのことがかえって河川改修工事終了後の継続的な参加の可能性をある程度担保していることを指摘した。
- 2007-10-31
著者
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