公共事業見直しと立ち退き移転者の精神的被害 : 岐阜県・徳山ダム計画の事例より
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概要
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近年,公共事業について社会的必要性が疑問視され,計画の見直しが相次いでいる。しかし,一定程度すでに進捗している事業の中止は容易でない。とりわけ,事業の予定対象地域住民は,事業によって生活が規定されてきた部分が少なくないために,事業推進側に位置するケースが増加している。こうした構図は,一見したところ,事業対象住民の犠牲者としての側面を捨象する一方,問題構造が複雑化するために事業の見直し自体を困難にさせる要因ともなっている。本稿では,岐阜県・徳山ダム計画を事例として,公共事業における立ち過き移転者の生活経験を被害構造論アプローチから解明することを試みた。その結果,過去40年にわたる人間関係のゆがみや故郷喪失感など,精神面の被害は甚大であることが浮き彫りとなった。そして,事業見直し論に際して,立ち退き移転者が計画継続を望む論理とは,重層的な被害経験を経た後の,自己存在を肯定化しようとする作用の結果であることが示された。
- 2001-10-31
著者
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