地域環境問題における「地元」 : 中海干拓事業を事例として
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概要
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地域環境問題において「地元」や「よそ者」という言葉を耳にする。どちらが正しいと単純に判断すべきものでなく、分けることで問題を解決できるものでもない。それにもかかわらず、関係者が自らの当事者としての正当性を高め、対立者のそれを低める方便として用いられている。本稿では中海干拓問題を通じ、「地元」が空間的な意味でどう使われているのか、事業推進派と反対派の立場から捉えた。行政は、当事者地域を、県や市町村を単位として、事業の影響を受けるかどうかでなく、事業の対象地があるかどうかで定める。一方、反対運動にも当事者としての「地元」意識がある。ただし、その範囲を設定せず、曖昧な「地元」概念を臨機応変に使い分ける。県や流域を代表する運動であると主張する一方で、問題を追求する際には湖と関わる生活圏を想定する。「地元」概念は、開発がらみの環境問題において事業推進派・反対派の双方にとって戦略的な資源のひとつである。想定する当事者範囲の違いが環境問題についての相互理解や合意形成を妨げるとも考えられる。計画論としての当事者の空間的線引きについて、その是非を問うことはもちろん、それを用いるのであればその方法やあり方について議論することが必要である。
- 1999-11-20
著者
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