カナダ先住民と土地財産権 : リルワットネーション居留地におけるコモンズの形成と衰退
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概要
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カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州の先住民族リルワットネーションの居留地を対象として財産権(土地権)の形成と変動の過程を記述した。先住民社会の共同体的側面と西洋近代的なカナダ社会とを対抗軸としながらコモンズの成立条件の一端を明らかにすることが目的である。リルワット先住民はカナダ法制度下の居留地において「法律上」の規定とは別に慣習的な財産権を「事実上」形成した。そこでは先住民の「伝統」を基礎にした総有的、内発的な制度の発展がみられた。しかし、1960年代以降の急激な商品経済の展開やカナダ社会の福祉型国家への移行という情勢変化の中で、自律的な土地利用の展開が閉塞状況に陥っている現実が明らかとなった。特に、カナダ政府が居留地に適用した疑似的な私的土地所有制度や居留地内外で進展した商業的森林伐採が先住民社会に大きな混乱をもたらした。また、財産権(土地権)を支持する権威機構はカナダ法制度と先住民の慣習や世界観との相克によって二重構造化し、その力関係が時々の歴史環境の中で変転してきた。今日では、政府資金の分配を基軸としてリルワットとカナダとの関係が規定され、それが依存体質を先住民社会の中に固定化させると同時に、「カナダ派」「伝統派」といった内部対立の要因となって自律的発展を阻害している。
- 1999-11-20
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