死産後に正期産を経た母親の死産体験への思い

概要

論文の詳細を見る
本研究の目的は,前回の妊娠において死産を体験し,今回,正常な妊娠・出産の経過を経た9名の母親の死産体験への思いの構造を明らかにすることである。出産後1〜2日目に半構成的面接を実施し,KJ法を参考にデータを分析した。死産後に正期産を経た母親の思いの意味単位は665であり,61の《ラベル》,14の〔サブカテゴリー〕,さらに【死産がもたらす不条理】【死産に対する母親の自責】【次子妊娠への執着と恐怖】【死産児とともに生きる】の4つのカテゴリーを抽出した。また,カテゴリー間の意味連関の分析を行い,以下の結果を得た。【死がもたらす不条理】と【死産に対する母親の自責】は,次子妊娠の願いと同時に不安や恐怖をもたらし,再び死産するかもしれないという【次子妊娠への執着と恐怖】を強めた。一方,【次子妊娠への執着と恐怖】は,死産を体験した母親の喪失と同時に死産児との関係を生成する力となり,母親の人生に【死産児とともに生きる】という意味を構築していった。死産後に次子出産をした母親には,体験をとおして苦しみや嬉しさなどの思いがあり,死産をなかったことではなく継続的に死産児との関係を生成していることが明らかになった。