A-1 ボーン・グローバル・カンパニー(BGC)経営とメタナショナル経営との比較 : SuntechとSTマイクロエレクトロニクス二つの事例から
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概要
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ボーン・グローバル・カンパニー(Born Global Company、以下BGC)は、「創業時から複数の国で資源を利用して製品を販売することにより相当な競争優位性を発揮しようとする企業」と定義されている(Oviatt&McDougall,1994)。BGCの際立った特徴は、経営者がグローバルな視点をもっており、誕生から直ちに国際的活動を行っていることにある。BGCは、母国で長年にわたって事業を行い、そして国際貿易を開始し、さらに、外国企業に対して技術供与や戦略的提携あるいは買収を行い、続いてグローバルな合弁会社や完全所有子会社の設立などに進んでいく伝統的な国際化プロセスと比較して、創業時またはその後間もなく世界に対して「ボーターレス」の考えを持って、必要な戦略により事業を開始し、展開する国際化プロセスを持つ。注目すべきことは、BGCの国際化現象のスピードの速さ及び創業時から国際ビジネスで優れた成果をあげるために採用されるアプローチである。BGCが出現した背景をみると、今日のグローバル化の進行、ICTの進展(特にインターネットの急速な発展)、国際ネットワークの発展、経営資源の有効利用と高度化の進展(リソース・ベース・ビュー)、ナレッジエコノミーの進展、豊富な国際的経験と知識を持ち起業家精神の旺盛な起業家(International Entrepreneur)の出現などの要因が大きく関わっていることが分かる。一方、BGC誕生の背景として「メタナショナル経営の進展」が大きく関係していると筆者は考えるのである。具体的には、メタナショナル経営は、トランスナショナル経営よりも21世紀の知識経済時代にフィットする、注目に値するグローバル経営モデルである。Doz,et,al,(2001)によって提唱されたこの革新的なモデルの特徴は、本国に立脚した競争優位性にだけ依存するのではなく、それを超越してグローバル規模で優位性を獲得しようとする経営にある。竹之内(2008)はメタナショナル経営の実現には関して「自国至上主義、自前主義、先進国至上主義等から脱却し、世界に散在する様々な知識を感知、確保し、それを移動・融合し、さらに変換、活用していくことが必要である」と述べている。このような能力を持った企業こそが、まさにこれからのグローバルな知識経済時代の競争で勝利者になるといえるである。BGCが、今後さらなる成長を遂げるためには、持続的競争優位性が重要である。そのためにはBGCの特徴である国際化の速さに加えて、メタナショナル経営の長所を取り入れることが必要であると考察する。本研究の目的はBGCの概念と特徴、及びメタナショナル経営の概念、特徴を考察した上で、BGC経営とメタナショナル経営との比較分析を行うことによりその類似点、相異点を明らかにし、BGCが競争優位を実現する上で獲得すべきメタナショナル経営の戦略的特徴および長所を明らかにすることである。
- 2011-06-17
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