日本企業の欧州での企業買収効果と買収先の法制度との関係について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究では、1991〜2003年の期間に日本企業が欧州で行った企業買収を対象に実証研究を行い、以下の二つの問題を検証している-(1)日本企業による国際買収は買収企業の株主の富にどのような効果があるのか、(2)投資先の国の法制度が買収効果にどのような影響を与えているのか。国際買収は、買収企業が優れた経営、技術や商品などを海外市場に展開することで企業の収益や価値を向上させると期待できる。一方、文化や言語の違いによる経営コストや政治経済的リスクなどが存在している。国際買収の効果はこれらのメリットとコストとの度合いで決められる。実証研究の結果、買収企業は新聞発表日前後3日間がCARが平均0.33%で、統計的に有意ではなかった。日本企業の欧州での企業買収は、全般的には、そのコストに見合ったメリットが達成されることは市場が評価しなかったといえる。法制度の影響については、次のような結果が得られた。(1)買収先が英米法の国、株主保護指数の高い国、監査コストレベルの高い国、規制の多い国での買収は、より低く、かつ負のCARが示されており、(2)買収先が英米法の国、株主保護指数の高い国、監査コストレベルの低い国では、買収価格(売上比率)はより高いが、(3)しかし、買収価格が買収CARへ与える影響が観察されなかった。総じていえば、英米法の国では投資家保護と会計制度が厳しく、規制もより煩雑であるという関係がみられる。つまり、英米法の国での買収は、買収後において厳しい会計制度や規制に対応するためのコストが予想されるため、結果的に負のCARとなったと解釈できる。一方の大陸法の国では、これらのコストが少なく、海外買収によるメリットが顕著に表れ、より高いCARが得られたと解釈できる。なお、このような効果は、ドイツ式大陸法の国において最も顕著である。ドイツ式大陸の国では、株主保護や規制がもっとも低いことに起因していると考えられる。本研究では、地域の要因によるノイズをコントロールするために、研究対象を欧州での企業買収に限定した。そのため、欧州以外での地域に本研究の結果を適用する際には注意が必要である。
- 2010-09-30
著者
関連論文
- 台湾企業の大株主支配,ディスクロージャーと企業価値に関する実証分析
- スキーインターハイが開催地域にもたらす経済効果の推計 : 秋田県鹿角花輪インターハイを事例として
- Bank Directorships and Bidder's Returns in Japanese Takeovers
- 博士号取得の現状,問題点,今後の展開(経営行動科学学会第12回年次大会)
- 買収防衛策の導入と株式市場の反応(研究発表6,経済危機下の経営行動科学-人と組織の活性化に向けて-)
- 日本企業の欧州での企業買収効果と買収先の法制度との関係について
- プロバスケットボールクラブ設立が地方都市にもたらす経済効果の推計―bjクラブ設立を目指す秋田県を事例として―
- ファンド買収企業の株価及び長期業績に関する実証分析(セッション11【研究発表】)