ダム計画の中止・推進をめぐる地域事情(<特集>水資源・環境政策と地域社会)
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概要
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ダム・河口堰計画は現在,大きな転換点に差しかかっている.政府自らがダム・河口堰計画の総点検を開始し,計画中止の手続きに取り組み始めた.これまで利水面の根拠であった将来的な水需要増加は,現在,その根拠を失っている.治水面でもダムの限界が強く意識されるようになった.ダムによる便益はいよいよ小さくなり,ダムの受益地域であった下流地域は過重な費用負担によって受苦地域化している.さらに上流山村地域は地域の存続をかけて多くの苦難と向き合っており,ダム計画はそうした山村地域をさらに苦境へおとしめる手段になっている.ダム計画の中止を巡っては自治体間で対応に差が出ている.川辺川ダム計画では熊本県が中止の立場にあるのに対して,八ッ場ダム計画では関係都県がダム計画推進の立場を崩していない.木曽川水系連絡導水路計画では関係自治体が対立している.関係自治体の対応差は政府・自治体河川官僚がダム・河口堰策に代わる政策を有していないことによる.国交省に政策として耐えられるレベルのダム・河口堰代替策の作成を義務づけることが必要である.ダム・河口堰問題の中で取り残されてきた上流山村地域に対しては,計画中止を巡って焦点化されている地域への迅速な対処と,将来的にはダムを介在しない上・下流地域関係の構築が求められている.
- 2011-03-30
著者
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