ロシアの出生動向 : ミクロデータと人口構造を通じた検討
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概要
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ソビエト崩壊前におけるロシアの合計特殊出生率は2.01という水準にあった。1999年にはそれが1.20を下回るようになったが、2007年までには再度1.5に近い水準にまで上昇している。本稿では、ミクロデータを利用することによって、如何なる要因がロシアの出生率の変動に影響を与えているかということを検討した。人口学の蓄積や出生力の経済分析の知見を考慮しない向きによる「政府の出生奨励策によってロシアの出生率が上昇した」等とする誤った見解が一部に見られる。経済環境の改善・心理状況の好転・個人所得水準の上昇・政府の出生奨励策導入、という全てが同一方向の影響を与えるものと想定される現象が溢れる中、計量経済学上の「識別問題」を無視した直感的な主張は無意味である。個人の意志決定を分析するために蓄積されたミクロデータが存在する中、出生という極個人的な意志決定の問題については、ミクロデータを用いた分析を行うことが大前提である。本稿の分析では、様々な形の特定化を行った所得・消費水準の指標は女性個人の出生動向に有意な影響を与えていないと結論出来る。所得水準・経済環境・はた政府の経済的出生奨励策、といった短期的な要因が直接的に出生率を決定づけるものではない、という他国でも得られてきた経験を支持する結果が得られた。
- 2011-03-31
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