不法行為に託されたもの(二) : ルソー『告白』「第一巻」「第二巻」における<盗み>の挿話のテキスト分析
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概要
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ルソーの自伝作品『告白』には,ルソー自身の過去の悪徳の数々が記述されているが,特に読者の注意を惹くのは,子ども時代を描いた巻において盗みのエピソードが数度回想されている事実である。ルソーは自伝行為として過去の実際の出来事とそれにまつわる内面の連鎖を記しているのであるが,少なくともそれは過去の出来事と心理状態の無色透明の写しではなく,むしろ自伝という形式の借り受けによるところのより効果的な思想の表明とも考えられる。本稿は「第一巻」「第二巻」に現れるいくつかの盗みの挿話とそれに関係する周辺部分を取り上げ,主として盗みが発生する舞台としての共同体とそこを統制している法の性格を分析することを通じて,ルソー思想の基本的構えとしての自然/社会の枠組みに接続する内容をそこから析出することを試みた。
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