豚ぷんおよび鶏ふん堆肥のリン酸組成

概要

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本研究ではリン酸肥料の代替として有用と考えられる豚ぷんおよび鶏ふん堆肥のリン酸組成の特徴を牛ふん堆肥と比較しながら逐次抽出法を用いて検討した.さらに,それらの製造条件(副資材,堆肥化方式)の違いが全リン酸含量やリン酸組成に与える影響を考察した.リン酸組成については特に溶解性が高いリン酸画分である水および重炭酸ナトリウム溶液で抽出されるリン酸の合計(易溶性リン酸)を中心に考察した.豚,採卵鶏およびブロイラーふん堆肥の全リン酸含量は牛ふん堆肥と比較して有意に高く,単胃動物である豚,鶏の体内ではリン酸吸収率が低く,飼料にリン酸化合物が添加されることが原因であると考えられた.全リン酸に占める水抽出リン酸の割合は豚,ブロイラーふん堆肥で肉牛ふん堆肥と比較して有意に低かった.採卵鶏ふん堆肥の水抽出リン酸割合は全ての畜種の中で最も低く,乳牛ふん堆肥と比較しても有意に低かった.易溶性リン酸割合は肉牛(72%)および乳牛(65%)ふん堆肥と比較して採卵鶏(30%)およびブロイラー(31%)ふん堆肥で有意に低かった.また,豚ぷん堆肥(49%)はそれらの中間であった.易溶性リン酸割合と堆肥のカルシウム含量との間には有意な負の相関関係が見られ,特に採卵鶏ふん堆肥で易溶性リン酸割合が低いのは,多量に含まれるカルシウムによって難溶性のリン酸化合物が形成されているためと考えられた.一方,ブロイラーふん堆肥の易溶性リン酸割合が低いのは有機態リン酸の割合が高いためであった.堆肥化の際に副資材が用いられた豚ぷん堆肥の全リン酸含量は"希釈効果"により,副資材なしの豚ぷん堆肥と比較して低かった.しかし,副資材の有無および種類が形態別のリン酸割合に与える影響は小さかった.一方,開放型機械攪拌方式で製造された豚ぷん堆肥の水抽出リン酸割合は堆積方式で製造されたものよりも有意に低く,難溶性である塩酸抽出リン酸割合は高かった.これは開放型機械攪拌方式による堆肥の腐熟度が相対的に高いことが関係していると考えられた.密閉型発酵方式で製造された採卵鶏ふん堆肥は開放型機械攪拌方式や堆積方式による場合と比較して,有機態リン酸割合が高いために易溶性リン酸割合が低い値を示した.豚ぷんおよび採卵鶏ふん堆肥の副資材の種類または堆肥化方式によって細分することによって,易溶性リン酸割合(作物に対する有効態リン酸の割合)の変動が全試料の変動より低下する場合があることから,本研究で得られた各細分グループの易溶性リン酸割合の平均値をそのグループの代表値として使用しうると考えられた.堆肥の易溶性リン酸含量を用いたリン酸ベースでの堆肥施用設計は,適正なリン酸施肥を通じて,目標収量の確保と土壌における過剰リン酸蓄積の回避を同時に可能にする意義を持つと考えられた.
2010-06-05

豚ぷんおよび鶏ふん堆肥のリン酸組成

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