ミャンマー・マイクロファイナンス最新状況(統一論題「世界における新たな金融ビジネスモデル」)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文の目的は、ミャンマーにおいて、政府系農村開発金融機関との比較との観点で、NGO型マイクロファイナンス機関(以下MFIs)は、市民活動に対する多くの制約の元いかにして活発に活動できているか論じることにある。軍事政権国家ミャンマーにおいても、貧困削減は政権維持のため至上命題である。そのため政府は、各種手段を用いて貧困削減への方策を考えている。しかし政府は、草の根市民活動的意味合いを有するNGO活動に対しては、その活動が反政府活動にも関連しうる可能性が大であることから警戒を怠っていない。MFIs NGOもその例にもれないはずである。政府による農村金融としては、国有のミャンマー農業開発銀行(Myanma Agricultural Development Bank,以下MADB)がある。205支店、約100万人の借り手がいるとしている。2003年から04年にかけ20,383百万チャットのローンを提供している。しかしMADBでは、軍部出身のスタッフが金融畑出身のスタッフに懐疑的なため、数多くの問題を抱えている。例えば、本来商業銀行にのみ適用されるべきSec.61 of Financial Institution Law(以下Sec.61 Law)によるインフレ率を下回る低金利政策の適用に疑問を持たず、機関のサステナビリティの維持に問題があることを理解していない、などである。このように、銀行がサステナビリティを確保するための施策が行えない状況にある。また、返済率に関しても、100%と報告されているが、インフレ率以下の低利ローンの返済のためにわざわざ高利貸しから借金するという報告もあり、返済率の内実に注意を払う必要がある。MFIs NGOとしては、UNDPがPACT Myanmarに実施を委任しているプロジェクトがミャンマーでは最大規模のものである。2007年時点で、クライアント数は総計約33万人、総ローン額は約60,625百万チャットと全国展開していないに関わらずMADBより規模が大きい。Sec.61 Lawも適用されない。他の国際MFIs NGO、ローカルNGOも、同じくMADBと比べフレキシブルな運用がなされており、サステナビリティ、高い返済率確保の担保がなされている。このように、MADBと比べ、MFIs NGOはフレキシブルな制度設計、政府へ柔軟な対応、ができており、活発な活動が出来ているといえる。
- 2008-10-30
著者
関連論文
- ミャンマー・マイクロファイナンス最新状況(統一論題「世界における新たな金融ビジネスモデル」)
- 消費者金融会社における、戦略的CSRとしてのマイクロファイナンス
- 途上国におけるマイクロクレジットの、わが国消費者金融に対するインプリケーション : 金利規制を例にとって(統一論題「消費者金融サービスと規制」)
- シンポジウム