体育におけるルール学習(I) : 戦後学習指導要領における「ルール」の位置づけとルール学習の特徴及びその背景の考察を中心に
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概要
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本稿では,戦後学習指導要領においてルールがどのように位置づけられてきたのか,またその中でルール学習がどのような特徴を有し,どのような背景のもとで展開されてきたのかを明らかにすること,そこから体育におけるルール学習の問題点を把握し,今後のルール学習についての研究課題を引き出すことを目的とする。主な考察は,以下のようにまとめられる。第1に,戦後指導要領においては「ルール」という用語の代わりに「規則」「きまり」が用いられ,そこでは仲よくする態度や公正・協力・責任などの社会生活に必要な態度(社会的態度)の育成に関わって,「きまり」「規則」を"守る"態度の学習が中心に位置づけられてきた。その背景には当時のスポーツ規範論や「身体活動を通した教育」観があり,その影響下でルール学習には倫理的・道徳的側面が強調されていた。第2に,指導要領の影響下,これまでの体育授業におけるルール学習の中心は,社会的態度の育成をねらいとするルール学習とルールづくり学習であり,それがセットとして行われてきた。そしてルールづくり学習では,教師によるルール変更から子どもの手によるルールづくりへとその学習の重点がシフトしていった。第3に,指導要領では,ルールに関する知識面での学習がほとんど位置づけられてこなかったが,90年代に入り体育における教科内容研究が進展する中で,ルールの社会科学的認識の獲得を目指したルール学習が構想され実践されるようになった。今後の研究課題としては,スポーツの倫理・道徳性と体育における社会的態度の育成との関係を実証的に明らかにすること,子どもの「合意形成」と「スポーツ文化の継承・発展」を結びつけたルールづくり学習の実践化,スポーツ文化の変遷とルール変更の因果関係やスポーツの意味形成とルールとの関係を学習の対象(内容)にしたルール学習の授業づくり,これまでのルール学習実践の分析や子どものルール認識の分析からルール学習に関わる教科内容の編成・構造化が挙げられよう。
- 日本教科教育学会の論文
- 1998-12-31
著者
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