明治期における児童虐待問題の構築と子どもの権利思想
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概要
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児童虐待防止運動が始まったのは「最近のこと」とされているが,わが国では,すでに明治末期に初めての取り組みが開始されている.「家」制度が存在し,親子が支配と服従の関係にあった当時において,「子どもの権利思想」の台頭は,児童虐待を許されないこととして認識させることに大きく貢献したと考えられる.「子どもの権利思想」では,子育てを親の義務・子どもの権利とする一方,親に優先するものとして「国家」を位置づけ,イノセントな存在である子どもを保護し,適切な家庭教育をすることが,社会防衛上も重要と主張した.本稿では,児童虐待がこのような文脈の延長で語られたことによって人々の関心を集めることができたこと,また,家族国家観とも折り合うことができたことを指摘し,当時の児童虐待防止,および,子どもの権利思想が有していた歴史的意義と限界について論じている.
- 一般社団法人日本社会福祉学会の論文
- 2005-07-31