介護における「現金支払い」をめぐる「消費者主導」とジェンダー : アメリカの事例から
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概要
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介護における「現金支払い」の制度は,しばしば「消費者主導」モデルの一形態として主張されるが,実際の運用局面についてジェンダー視点を加えた複眼的分析が必要である。本稿は,介護における「現金支払い」について,「消費者主導」という視点からの主張やそれに対するジェンダー視点からの批判を整理したうえで,アメリカ合衆国の事例を検討した。事例から明らかにされた政府による制度導入の論点は,(1)インフォーマル資源への「費用抑制的な支払い」の内実,(2)「安心感」と「力の行使」「自由な選択と決定」との関連,(3)提供者の不利の改善可能性,(4)利用者と提供者の組織的交渉の機会および交渉先としての政府のあり方,となった。これらの論点の考察により,「現金支払い」制度が利用者・提供者双方の利益となるには,費用投入,安心感確保等の条件整備,提供者への権利保障に関する政府責任の明確化が必要であること,また制度改善の条件として,利用者と提供者の組織化と協働,政府との組織的交渉の場の確保が重要であることが示唆された。
- 一般社団法人日本社会福祉学会の論文
- 2001-08-31