医療=の中の介護労働:"寝たきり老人"対策としての「付添」の制度化と問題化を手掛かりに
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概要
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本稿は,日本における介護労働の社会的認知・評価のメカニズムを解明する作業のひとつとして,医療施設の高齢者ケアにおける付添制度の展開を分析した.<BR>介護労働に関する議論は,その評価が不当に低いという前提でなされることが多い.日本では,一方で,介護専門職の国家資格化のように<脱一低評価>に向けた政策展開もみられるが,他方で,医療施設における介護専門職の導入は介護労働の<脱一低評価>と連動していない.こうした状況の制度的な規定要因として,本稿では,医療において介護労働という領域が承認され「介護職員」が配置される以前の,介護相当領域への政策対応の重要性を指摘した. "寝たきり老人"ケアへの付添制度の適用,恒常的活用とその見直しという制度的な対応の積み重ねにより,付添の属性としての"無資格""非専門""低い社会的経済的地位"が,病院内の「介護職」を編成し評価する上での準拠枠となった.その準拠枠が,介護専門職が登用されてなお大きな影響力をもち,介護労働(者)の評価の転換(上昇)を妨げているのである.<BR>同じ介護職という名称のもと,そこには異なる制度的背景に規定された多様な評価・認知の枠組がある.介護労働(者)の評価に関する議論は,こうした介護労働の多様性・異質性をふまえることが求められる.