2003年改正建築基準法を満たした新築住宅室内空気における揮発性有機化合物濃度変化に関する調査
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概要
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日本でシックハウス症候群が社会問題化して久しい。この問題を防ぐために、日本の厚生労働省は室内空気における13物質の濃度指針を示している。しかし、これらはガイドラインにすぎず法的拘束力を持たない。一方、2003年7月1日に国土交通省によりシックハウス対策を盛り込んだ建築基準法が改正・施行された。この法律は居室を持つ建築物において、chlorpyrifosを添加した建材の使用を禁止し、建築物の換気回数に基づき、formaldehyde放散量ごとに建材の使用可能面積に制限を設けている。また家具などから放散される揮発性化合物を考慮し、機械換気設備の設置を義務付けている。室内空気質評価を目的とした室内空気の化学汚染調査、とりわけformaldehydeとする調査は数多く存在するが、それに比べてformaldehyde以外の化合物を扱う調査は多くない。また、換気設備を作動させた場合の濃度実態や濃度上昇パターンを調査した報告は少ない。本研究では改正建築基準法を満たした新築住宅における実測をふまえて、室内空気の化学汚染実態を明らかにすること、及び揮発性有機化合物(VOCs)の経時変化を調査することを目的とした。引渡し前の新築住宅3戸でVOCs4種(ethylbenzene、styrene、toluene、total xylene)及びカルボニル化合物2種(formaldehyde、acetaldehyde)の室内濃度と上記VOCs変化パターンを調査した。VOCsはTENAX TAを充填したガラス製捕集管により流量計付きポンプで100ml/minで10分間空気捕集し、GC/FIDにより分析した。カルボニル化合物はDNPH cartridgeにより流量計付きポンプで1000ml/minで30分間空気捕集し、高速液体クロマトグラフで分析を実施した。空気採取は2回フローリング洋室及び外気で実施した。測定中、24時間機械換気設備を作動させた。本研究の測定住宅における対象化合物濃度はすべて厚生労働省により定められた指針をすべて下回った。したがって、改正建築基準法がVOCs濃度、とりわけ使用面積制限を行っているformaldehyde濃度低減効果を示す一例といえるであろう。しかしながら、測定対象中1戸の住宅におけるacetaldehyde濃度が指針値に非常に近い濃度を示した。したがって、この化合物に対して、建材使用制限等何らかの対策が必要であると考えられる。また、24時間換気設備を作動させた状態でのVOCs濃度は徐々に上昇し1.0hから5.0hで定常に達した。経時変化のパターンは、物質の種類でなく住宅ごとに同様の傾向を示した。本研究では、2003年建築基準法改正後の新築住宅における測定により、VOCs、カルボニル化合物の濃度実態、経時変化についての基礎的データを得た。今後、さらにデータを増やしていくことが必要であると考える。また、規制対象2物質以外の物質に対する対策の必要性について示唆した。今後、関係省庁の規制の動向を見守りたい。
- 社団法人空気調和・衛生工学会の論文
- 2005-10-05
著者
-
田中 辰明
お茶の水女子大学
-
田中 辰明
お茶の水女大 生活環境教育研究セ
-
柚本 玲
お茶の水女子大学
-
荒川 友美子
お茶の水女子大学大学院、人間文化研究科
-
田中 敏之
帝京科学大学理工学部
-
荒川 友美子
お茶の水女子大学大学院人間文化研究科
-
田中 敏之
帝京科学大学
-
柚本 玲
お茶の水女子大
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