展示動物の福祉 : 人を魅了するため野生動物医学を取り入れた健康管理(<特集>野生動物医学における動物福祉,第15回日本野生動物医学会大会シンポジウム)
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概要
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動物園内で「狭い檻に閉じ込められてストレス!」と聞こえてくる来園者の声。展示されている野生動物の多くは飼育下繁殖個体である。本当に生まれ育った環境によるストレスを受けているだろうか。一方,刺激のない単調な生活や不適切な栄養学的管理にさらされたり,予防可能な疾病に罹ったりした場合はどうか。動物福祉は,感情的に論議されるにとも多いが,日本野生動物医学会では科学的な評価を目指している。動物園では展示動物の肉体的かつ精神的な健康を保つため,「環境エンリッチメント」手法を活用し,動物の立場に立った飼育環境の向上努力を行っている。また,動物愛護的観点からは疑問に思えるかもしれない野生動物医学を応用した飼育管理,「予防医学」と「獣医学的健康管理」を実践している。例えば,ワクチン接種,麻酔を伴う健康診断や外科手術は動物にとって短期的にはストレス要因だが,結果として長生きさせ,種の保存に関わらせる。得られた科学的データは野生個体群の保全に役立つ貴重な情報にもなる。生活の質を維持できない動物の安楽殺技術も精錬させねばならない。さらに,家畜・ペット種とのふれあい体験や展示動物の死亡と死因の情報公開など動物福祉教育の場にもなる。生死を展示し,野生本来の行動生態を魅せ,同時に個体ごとに工夫した展示動物の福祉の実践は,野生動物の福祉,つまり生息環境の保全にも通じる。科学的な検証と評価基準の整備も必要である。
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