硼素化合物による防蟻処理〔II〕 : 硼素化合物含有セルロース素材で被覆された木材の防蟻効力について(予報)(薬剤)
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概要
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セルロース素材はシロアリの最も嗜好する物質であるにもかかわらず,硼素化合物含有セルロース素材になると,急に好んで摂食しなくなり,飢餓状態で致死するのか,きわめて微量摂食して中毒死するのか,致死の原因がこの二つのいずれにあるのか,あるいはこの二つが同時に原因になるのか,これらの問題についてはいまだ明確に断定できなかったが,いずれにしても供試材料を防蟻材料として研究を進める価値あるものと考察されたので,今回腰高シャーレによる防蟻材料試験法に準じた試験と,実験室内で飼育しているイエシロアリの3コロニーにこの防蟻材料で完全に被覆した木材試験体を配置し,防蟻効力を試験した結果とから,つぎの結論に達した。1)ペトリ皿による前回の報告と同様に,硼素化合物含有セルロース素材は,イエシロアリに対して忌避性物質ではなく,供試虫はこれに接近し,蟻道を構築することを再確認した。2)第1コロニーのように,活力のあるコロニーでは,元気旺盛な職蟻が木材を被覆した供試材料を穿孔することがある。内部の木材表面を注意して調べると,表面に僅かに食痕が認められる試験体(1-3,3-4)があった。しかし,供試材料に約10か所穿孔した第1コロニーにおいては,生殖虫(女王・王)を含めて全個体が約3,4か月の間に致死し,コロニーは消滅した。3)第2コロニーのように,供試材料に穿孔の跡が認められなかった場合には,内部の木材にも,もちろん食痕がなかった。したがって,防蟻材料として100%有効であったといえる。試験体を全部除去したので,コロニー自体はいまなお残存しているが,その構成個体数はかなり減少した。4)第3コロニーのように,供試材料に1か所のみ穿孔した跡が認められ,内部の木材の表面1か所に長さ1.4cm程度のきわめて細い線状食痕(深さ2,3mm程度)が認められた場合もあり,前同様,試験体を全部除去したので,コロニー自体はいまなお残存しているが,その構成個体数はさらに減少していた。以上の結果から,木材を完全に被覆した硼素化合物含有セルロース素材がイエシロアリ職蟻によって多数穿孔された場合には,そのイエシロアリのコロニーは,生殖虫も含めて全個体が致死し,コロニーは消滅する。この場合内部の木材の表面にごく僅かであるが,食痕が認められたが,これは被覆材料の厚さが問題になると考察される。きわめて僅かに穿孔された場合にに,コロニー自体は容易に消滅しないが,その構成個体数が非常に減少する。被覆材料がまったく穿孔されない場合には,もちろん内部の木材も加害されないのであるから,防蟻材料として100%有効であったといえる。供試材料をシロアリが穿孔するか,しないかは,コロニーの活力如何によるもののように観察された。したがって,シロアリの加害をうけるおそれのある建物の床組材などに供試材料を接着剤とともに吹き付け処理し,木材部を完全に被覆すれば,防蟻材料として優れた成績を挙げるものと結論する。
- 日本家屋害虫学会の論文
- 1984-01-30
日本家屋害虫学会 | 論文
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