クヌギキンモンホソガ類似種の分類学的再検討並びに1新種の記載(鱗翅目:ホソガ科)
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概要
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日本ならびに韓国産クヌギキンモンホソガ(Phyllonorycter nipponicella)の再検討を行う過程で,従来著者(KUMATA,1963,1966)によってクヌギキンモンホソガと同定されていた標本には2種類が含まれていることが判明した.そこで,現在アメリカ国立自然史博物館スミソニアン研究所に保存されているクヌギキンモンホソガのタイプ標本と比較検討した結果,1部の標本は真のクヌギキンモンホソガと同定されるものであるが,他の大部分は新種に含まれるものであり,Phyllonorycter similis(ミスジキンモンホソガ)の名前で記載した.ニセクヌギキンモンホソガ(Phyllonorycter acutissimae)を含めて,これら3種は色彩斑紋上に明確な区別がなく,クヌギキンモンホソガ類似種として一括して取り扱い,再記載を行うと同時に交尾器による区別点を示した.用いた標本の大部分は,食草に潜葉していた幼虫から飼育羽化させたものである.そこで,これらの飼育データーと分布を基に,昆虫の種類と食草の種類との関係を考察した.クヌギキンモンホソガはコナラ属(Genus Quercus)のクヌギ節(Section Cerris:クヌギ・アベマキを含む)を,またミスジキンモンホソガはコナラ節(Section、Prinus:カシワ・ミズナラ・コナラを含む)を主要な食草としており,これら2種は交尾器におけるわずかな違いの他に食草選択においても区別出来ることを指摘した.ニセクヌギキンモンホソガはクヌギ節を主要な食草としているが,コナラ節およびクリ属(Genus Castanea)をも食し,このことから,交尾器における比較的顕著な違いをも含めて,本種はクヌギキンモンホソガおよびミスジキンモンホソガと共存出来る程度に種分化の進んだ種類であろうと推論した。
- 1982-12-20
著者
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久万田 敏夫
Laboratory Of Systematic Entomology Faculty Of Agriculture Hokkaido University
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久万田 敏夫
Entomological Institute, Faculty of Agriculture, HokkaidO University