北海道で発見したコケモモに潜葉する小蛾類3種
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概要
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コケモモの葉に潜る小蛾類は,ヨーロッパからは多数の種類が知られているが,これまでわが国からの記録はない.筆者らは北海道東部に散在する湿地帯の蛾類を調べる過程で,コケモモから3種の潜葉性小蛾類を発見したので報告する.いずれもヨーロッパに普通に分布する種類である.Ectoedemia(Fomoria)weaveri(Stainton)(Nepticulidae)コケモモチビモグリガ(新称)(チビモグリガ科)幼虫ははじめ表層を線状に潜るが,のちに葉内を斑紋状に食害,最後には絹糸を用いて葉の内部を膨らませて蛹室を作る.そのため,表面はほぼ円形ドーム状になり,裏面はやや平坦.潜葉孔内に黄色の長楕円筒状の繭を作って化蛹,成虫は7月に羽化した.日本では今のところ根室地方の湿地帯から知られるのみ.Phyllonorycter junoniella(Zeller)(Gracillariidae)コケモモキンモンホソガ(新称)(ホソガ科)幼虫ははじめから葉の裏面を斑点状に潜り,成長とともにそれを拡大してしばしば葉面全体を占める.後に表側をも食害するため不定斑点紋が葉の表面から見える.化蛹にあたって下面を強く収縮させ,上面を屋根型に膨らませて葉の内部に円筒型の蛹室を作る.したがって,葉の下面には4-5本の太い皺がある点で上の種類から区別できる.潜孔内で化蛹,7月に羽化.幼虫は根室地方で発見したが,成虫は北海道中央部の羊蹄山麓(標高500m)でライト・トラップで採れている.Coleophora glitzella Hofmann(Coleophoridae)コケモモツツミノガ(新称)(ツツミノガ科)半透明の全層斑紋状の潜葉孔を作るが,裏面には必ず幼虫が潜りこんだ小円形の穴があるか,またはミノがぶら下がっている.この点で上記2種の潜葉孔とはっきり区別できる.幼虫のミノは2枚の葉片を綴りあわせて作られ,長楕円筒状,上下は角張り,やや偏平である.根室地方の湿原で発見,成虫は7月に羽化した.北ヨーロッパにはColeophora murinella Tengstromが分布し,やはりコケモモを食害する.この種類はC.glitzellaにきわめて類似し,両種の区別は難しいらしい.今後研究が進めば,ここに発表したコケモモツツミノガの学名が変わる可能性がある.
- 1995-06-20