中年期の老いの自覚と対処における「関心」の向け方による相違
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本研究は,領域個別的自己概念である「関心」の向け方の違いが中年期発達の個人差を規定すると想定し,理論的検討から関心全低群,関心全高群,関心分配群の3タイプを設定した。研究1では「関心」タイプの妥当性が検証された。まず,不安-防衛タイプ(安田・佐藤,2000)との関連から基準関連妥当性が検討され,全低群と「抑圧型」,全高群と「高不安群」との対応が見出された。続いて,不安,自尊感情,情緒不安定性と「関心」タイプとの関連から内容的妥当性が検討され,全高群は高不安,低自尊感情,高情緒不安定性の特徴をもち,分配群との峻別性が示された。いずれの結果も仮説に一致したため,「関心」タイプは一定の妥当性をもつと判断された。研究2では,老いの自覚と対処の過程を「関心」タイプ別に検討したところ,異なる特徴が見出された。全低群は,衰えを自覚せず対処に至る心的過程も活性化されない傾向があった。全高群と分配群の老いの自覚から対処の過程は概ね類似していた。しかし,心理社会面の衰えを感じたとき,分配群は問題焦点的な対処を減らすという適応的な移行を示すのに対して,全高群では対処を放棄する傾向が見出された。
- 2010-06-30
著者
関連論文
- 成人女性の葛藤--ワーク・ライフ・バランス,子育て,母娘関係をめぐる概観
- 国内における不登校研究の概観--1990-2007年における雑誌論文・記事による研究動向の検討および不登校に対する重要な援助資源である教師・家族に焦点をあてた概観
- 高校生の登校回避感情と登校理由から考察する不登校とその支援--大学生を対象とする回顧法の質問紙調査から
- 中年期の老いの自覚と対処における「関心」の向け方による相違
- 中高年期における主観的老いの経験
- K321 教師のストレスが児童生徒へのかかわりにもたらす影響とその影響を最小化する心理的要因 : 教師に対する面接調査から(口頭セッション53 ストレス)
- K417 学校現場で求められる自尊感情を測る尺度作成の試み(口頭セッション69 自己効力感・自尊感情)
- 中高年期の自己評価における発達的特徴 : 自尊感情との関連,および領域間の関連に注目して
- 老いと自己概念からなる中高年期発達モデルの作成と妥当性の検証
- 中高年期発達のメカニズム : 老いに伴う発達過程
- 小・中・高校における自傷行為の実態及びその対応に関する研究(2005年度研究助成金成果報告)
- 中高年期のwell-beingと危機--老いと自己評価の関連から
- 中年期の多次元的自己概念における発達的特徴 : 自己に対する関心と評価の交互作用という観点から
- 発達障害のプラクシス 発達障害と反応性愛着障害の鑑別的見立て
- 発達障害のプラクシス 広汎性発達障害における社会性の障害--情動と学習との関連による捉え直しと支援への示唆
- 自己概念の発達--乳児期,幼児期,児童期,思春期
- 教師独自のストレッサー,児童生徒へのかかわりを含むストレス反応と教師観・教育観を規定する要因--教師の属性による差の検討
- 発達障害のプラクシス(3)高機能広汎性発達障害が疑われる不登校の中学生女子に対する多角的支援
- 発達障害のプラクシス(4)心理発達アセスメントにおける自閉症スペクトラムが疑われる場合の保護者への構造化面接ツール開発のための予備的研究 : 診断基準,診断補助ツール,構造化面接尺度の概観からの検討
- 蹴り払い応答と噛みつき応答を指標とする易刺激性の行動学的評価 : 慢性緩和ストレスマウスを用いた行動学的・行動薬理学的研究
- コンサルテーションの理論的,実践的検討 : 女子大学生の母親に対するコンサルテーション事例の介入過程