戦後日本の地域構造・都市構造と労働力・世代の再生産に関する一考察
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概要
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本稿では,労働力ならびに世代の再生産が,戦後日本の経済体制にとって不可欠の要素であり,それがこの時代特有の地域構造・都市構造を作り出す重要な役割を担ってきたことを確認する.地方圏から大都市圏への大量の人口流入と1970年代以降の急減の背後には,人工妊娠中絶の急速な普及があったのであり,高度経済成長の前提条件の一つである戦後日本特有の人口構造は,生産の論理には還元できない人口学的要因によって作り出されたといえる.高度経済成長期に大都市圏に流入した人々の多くは,大都市圏に定着し,郊外の形成と発展に寄与した.郊外化という地理的現象は,郊外第一世代の住宅需要・土地需要・耐久消費財の消費などを通じて,高度経済成長を成立させる要因となった.1970年代以降に起こった製造業の地方圏展開は,企業内地域間分業による大都市圏と地方圏の階層的地域間関係を成立させた.しかし製造業進出の度合いは,同じ地方圏の間でも地域差を伴っていた.その要因を明らかにする試みは,一般的な傾向とともに地域性にも目配りする経済地理学を模索することにつながる.以上の事象を実証的に検討することを通じ,労働力ならびに世代の再生産が地域構造・都市構造の形成に果たした役割を積極的に評価すべきことを主張する.
- 2007-06-30
著者
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