住宅政策改革と大都市圏居住の変容に関する予察 : 東京大都市圏を中心に
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概要
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公営住宅,公団住宅,および住宅金融公庫は,戦後日本の住宅政策の根幹をなしてきたが,1990年代後半以降にいずれも大きな変容をとげた.本稿の目的は,一連の住宅政策改革の内容を整理し,東京大都市圏を対象地域としてその影響について予察的考察を行うことである.公営住宅では,量的不足に加えて需要と供給の地域的不均衡が発生している.公営住宅法の改正は,公営住宅用地を都市再生に利用する道を拓くものであり,需給の地域的ミスマッチを拡大させる恐れがある.遠・高・狭との揶揄はあったものの,公団は比較的良好な住宅を供給してきたといえ,その住宅経営は良績を収めてきた.公団が実質的に解体されたことにより,住宅供給は基本的に民間に委ねられることになった.しかしファミリー向けの賃貸住宅の供給は依然として不十分であり,定期借家権の導入も期待されたほどの効力を発揮していない.制度金融である住宅金融公庫の廃止により,住宅金融も民間に委ねられた.これは持家を購入できる層とできない層の二極化を招く可能性がある.また,公庫廃止後も,大都市圏では依然としてマンションの大量供給が続いており,供給過剰の懸念もある.民間による住宅供給と住宅金融を基本とする住宅政策への転換は,居住に対する経済原理の支配を強めるものであり,新たな住宅階層を発生させる可能性がある.
- 2006-03-30
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